庵主近詠
平成21年 6月![]()
角川の「俳句」5月号の付録「吟行手帳」に、一句載っていた。
浮いてこい逃げも隠れもしないから
日暮里から伸びて足立区を縦断する、日暮里・舎人ライナーに乗った。
緑立つおもちゃのやうなモノレール
薫風や荒川を越すモノレール
足立区は東京都なり葱坊主
足立区は埼玉ならず葱坊主
足立区に隣る草加市カラス麦
葱坊主足立区舎人四丁目
足立区の海抜はゼロ杉菜生う
足立区の溝に色鯉とて生まれ
春愁や重たく垂るる黒薔薇
花菖蒲縁台将棋はすぐ詰んで
腰くねる色鯉が向き変へるとき
少年にざりがにの川ありにけり
掬はれし蝦の透けゐる春の川
太子堂床下猫の母と子と
風薫る格天井の極彩絵
正徳の治という昔藤の花
寛永寺の御神領なり松の芯
御神領にザリガニを釣る童かな
みほとけは孤愁におはす暮春かな
夏めける谷中銀座をひだる神
表札を読む癖散歩うららかに
へび道を汗ばみ行けりひだる神
伊勢丹の社員の墓や照り若葉
若葉して道灌どのは美丈夫で
創価学会二代目会長の戸田城聖を記念した墓地公園の花見に行った。
妙法と二字を刻みて花の墓
妙法と刻める墓や花の中
妙法と墓に刻みて桜かな
花散るや墓に貴賎の差別なし
札幌円山公園の花見にて。
花は花ジンギスカンは臭へども
花に葉にジンギスカンの臭ふかな
花は葉にジンギスカンの丸き雲
花に葉にジンギスカンの雲の影
日高の名峰・花の山として名高いアポイ岳に登った。
あんなにも遠くの山に登るのか
山に入る熊除けの鐘まづ一打
熊に襲はれし話や登山口
這うやうに登る馬の背夏の山
初夏や花咲き登るアポイ岳
アポイ岳から吉田岳へと白き蝶
ダニ多き縦走路なり夏の山
縦走や風止めばふと鳴き兎
雪渓に足を止めれば鳴き兎
下山して山振り返る振り仰ぐ
あんなにも遠き山より下り来しか
護摩堂に熊の爪痕夏未だ
花散るや蝦夷三官寺等樹院
二風谷のダムの濁流夏寒し
鈴蘭や二風谷にダム厳めしき
流木がふさぐ魚道や夏寒し
インド連想。
煤逃げや「そうだ、ニューデリーへ行こう」
計算が好きで裸足でインドの子
計算が好きで得意で裸足の子
大アジア主義がここにも羽抜鶏
インド人を驚かしたる冷菓あり
「天為」6月号
茹でられて蟹の真つ赤な多喜二の忌
−−今年3度目の蒐玉集。ただし、20句中の20番目。
21番目とか、22番目というのが多いので、今回は先生の数え間違いかも。
夭夭とかぎろひ立てり五稜郭
押し上げて流氷岸に悲しめり
涅槃図を畳む聖骸包むごと
フェニキアの浜は西向き月日貝
平成21年 5月
札幌にも遅い春がやってきた。まだ肌寒いが、裏の丸山に、土日には登っている。動物園も。
頂上は日向の匂ひ芽吹山
木々透けて大都会見ゆ芽吹山
のどけさの極みに鴉鳴きにけり
鴉鳴くこの上もなきのどけさに
春が来たやうな顔して鴉跳ね
春泥の撥ねるが楽し犀ダッシュ
春が来たこと知らぬ気(げ)に河馬あくび
春が来たやつと来たかと象散歩
雪泥を踏みて転びしことも春
千葉に帰ることが重なったので、そのたび、千葉城、千葉寺、千葉神社などに出かけた。
住み古りし千葉を誇りに凧
花の雨戊辰の戦さ千葉にても
花の雨亥鼻城の鼻の先
花冷や亥鼻城の甃
咲き満てる花に亥鼻城の影
散り初むる花とこれから咲く花と
花盛り千葉の新地の貸座敷
ひとひらの花散りかかる力石
花冷えやびくともせざる力石
芽ぐみ初む千葉の大寺の大銀杏
柳橋の最近の様子をテレビで見て。
さりげなく触れ花冷えの夜会巻
逢瀬つかのま花冷えの夜会巻
花屑を掃き塩盛つて髪結(かみい)さん
花冷えや柳橋行く夜会巻
夜会巻には花冷えの大川が似合ふ
新潟に行く機会があった。
新潟でまづ喰ふ饂飩春寒し
新潟に酒蔵多き朝寝かな
新潟は湯の香水の香朝寝して
新潟は木の香酒の香朝寝して
連なりでバス行く万代橋おぼろ
灯ともしてバス行く万代橋おぼろ
連なりて僧行く万代橋おぼろ
来し方も行く手もおぼろ万代橋
橋の灯のだいだいいろに穀雨かな
求愛のかくも切なし蛍烏賊
古き良き町騒を聞く春の宵
古町によき女あり春の宵
男運乏しき手相花ぐもり
風邪声を色気と云へり辻占師
春光や前立の「愛」粲粲と
土恋し雲洞庵の土恋し
のどけしや船で行き来の信濃川
のどけさの万代橋の下くぐる
信濃川水門くぐるうららかに
北前の古き港や菜花咲く
北前の古き港の蛍烏賊
四月の季語で多作してみた。
(黄砂)
霾天やひつくり返す砂時計
砂時計に砂詰めてゐる霾ぐもり
うらぶれし山口美川黄砂降る
北京霾天弁髪を切り捨てる
つちふるや江青書き足す悪女伝
つちふるや江青に果つ毛王朝
王朝は悪女に滅ぶ楊かな
霾天や旗艦三笠を見失ひ
(桜)
木が命噴き出だすごと花吹雪
花冷ゆる絶対秘仏おはす堂
花守のあかとき一人幹を抱く
前世は殺人鬼なり桜守
滝桜別れるために逢ひに来し
逢はざれば花の別れのなきにしも
花よりも人を照らして花篝
城に寄せ来る幾万の花見人
本丸を囲み幾重も花篝
花散るや南部津軽の国境
手相濃くせんと爪立て花曇
ひとひらの花も止めず甃
とどまれど花とどまらず甃
花冷ゆることに釦の固き服
花冷えや婆が罵る東洋鬼
仲を裂くごと桜餅を剥がす
今生の別れぞ桜餅と葉と
図書館に寝に来る人ら花の昼
花冷えや字面の読めぬ頌徳碑
かにかくにおふくろ自慢花筵
「母」の字に涙ふたつぶ花ぐもり
凸凹の尼のつむりや花の昼
大寺の未曽有の桜咲きにけり
(雲雀)
待ち人を待ちきれなくて揚雲雀
防人の未だ還らず揚雲雀
帰り来る防人見ゆや揚雲雀
(恋の猫)
事件現場より卒然と猫の妻
猫の妻事件現場に立ち尽す
新聞を踏めば尿意や春の猫
恋の猫墓地の隣に住み古りて
狂ほしく屋根から屋根へ恋の猫
(啄木忌)
函館から札幌へ汽車啄木忌
札幌から小樽へ流れ啄木忌
小樽から釧路へ夜汽車啄木忌
釧路から函館へ船啄木忌
函館から東京へ汽車啄木忌
啄木好きはみなお人好し残る雪
汽車になき船のデッキや啄木忌
(葱坊主)
葱坊主秩父に今も困民党
走れ走れ秩父の男葱坊主
防人の夫帰り来よ葱坊主
秩父から男は走る葱坊主
田舎には乏しき刺激葱坊主
(竹の子)
竹の子飯炊けたるころに庵主来る
土間から竹の子良寛さまなら如何にせむ
筍の皮の手触り獣めく
凡そ天下に雑事忙事や筍掘る
人の世に出で筍の悔やみやう
甲士邸焼き竹の子に味噌つけて
筍掘る分別臭き顔をして
筍掘る悟つたやうな顔をして
試し切りするには哀れ今年竹
袈裟懸けに斬る伸び過ぎし筍を
もののふに用のなき世の今年竹
敦盛の享年十五今年竹
武士道廃れ百年の筍掘る
日露以後武士道廃れ今年竹
真実の一路を天に今年竹
「天為」5月号
踏み応へあらむ明治の霜柱
−−今年2度目の蒐玉集。
竹馬の去つて昭和は死者ばかり
火事の中かの背比べの真木柱
船の灯が鱈場の暗き海囲む
「空」と「海」と天に書きたり遍路杖
平成21年 4月![]()
「狩」4月号の「秀句探索」コーナーで、大野崇文さんに一句鑑賞してもらった。
先代も先々代も海鼠なり
小学館の週刊「日本の歳時記」3月号の「季節の言葉」で、片山由美子さんに一句鑑賞してもらった。
夭折はすでにかなはず梨の花
演劇集団富良野グループによる舞台公演「屋根」を見て。
涼しさや千年同じ星の位置
春の星熊に優しき名を付けて
凍裂の音(ね)に寝もやらず奥富良野
凍裂の松に樹脂湧く弥生かな
冬眠の熊の目覚めへ凍裂音
雁皮剥ぎをれば湧き立つ春の蠅
人形浄瑠璃「壺坂観音霊験記」を鑑賞して。
沢市は着膨れお里は着古して
如月の風冴え冴えと霊験記
杖残し身投げの崖や梅未だ
同じく、人形浄瑠璃「日高川入相花王」を鑑賞して。
渡し場に衣を脱ぎなば蛇身なり
花と蛇げにげに怖ろしきは女
「セザンヌ主義」展覧会を見て。
老画家へオマージュのごと春の雪
春雪を踏みセザンヌの池巡る
釧路川の幣舞橋に、ラッコのクーちゃんを見て。
三月やラッコ手を振る釧路川
出雲俊江さんの博士号取得を祝して。
胡蝶羽化して登仙の博士号
三月の季語で、多作してみた。
(ひなまつり)
畏みて猫が見上げる雛の段
老い知らぬままに古びし雛かな
出窓からさす月明かり雛の夜
狐目と引目は違ふ紙雛
流し雛我ら談笑してゐたる
嘘いつか我が身になじみ雛の夜
非時(ときじく)を見つめゐるなり雛の目
常世より蘇へらせて雛飾る
常世とは常闇ならむ流し雛
常闇の常世へ帰す流し雛
雛屏風古今の恋歌書き散らし
いにしへの恋こそ佳けれ雛屏風
紫のひひな飾るも立子の忌
(亀鳴く)
万年のまだ千年と亀鳴けり
月へ去ぬ兎恋しと亀鳴けり
船頭の多さに亀の鳴きにけり
亀鳴けり小作根性丸出しに
むかし遊郭いまはキャバクラ亀鳴けり
万年は永過ぎと亀鳴きにけり
一歩づつ生きて万年亀鳴けり
俳人俳諧廃人徘徊亀ぞ鳴く
自販機が駄洒落を言つて亀鳴いて
リモコンに印を付けて亀鳴いて
リモコンが五つもあつて亀鳴いて
(春一番)
春一番男まさりが男に恋
はらからも父母も若かり春一番
母の住む山口美川春一番
春一番ペンキの乾く偏奇館
春一番鳥居の小石吹かれ落ち
「天為」4月号
黒々と神代の地層霜の花
長州に狐目多し夜叉時雨
京なれや長州贔屓のふくと汁
あらたまの混沌といふめでたさよ
満載の喫水深し宝船
平成21年 3月
角川の「俳句」3月号の、通信添削講師紹介に、5句載せてもらった。
歌膝の女美し臘八会
蝦夷鹿の赤身ぞ煮ゆる雪の底
雪女郎の子として生まれ雪女郎
蛇行多き古地図の川や雪卍
変化球おぼえたき子に日脚伸ぶ
シルビィ・ギエムのバレエ公演を見た。ベジャール振付のボレロである。
しばらく、ボレロを封印していたギエムが、4年ぶりに封印を解いた公演。
ベジャールの今は亡き世の冬の月
寒月光ボレロ静かに始まれり
寒月や円光描くギエムの手
寒の月踊りゐるのは手長神
長き手が円光描く冬の月
凍星や愛と哀しみのボレロ舞ふ
冬の汗バレエの少女美しく
冴えざえと足先バレエの少女たち
ベジャールの死後の寒さやボレロ舞ふ
寒月光砕け散るごとボレロ果つ
拍手鳴り止まず寒さを忘じけり
寒満月カーテンコール幾度も
大倉山シャンテで、初めて、ナイタージャンプを見た。
ナイターの灯の美しきジャンプ場
ナイターの灯に映へパウダースノー舞ふ
ジャンプ見る芯の芯まで冷え切つて
スキージャンプ見つつ熱々饂飩かな
今年もまた札幌雪祭り。
転びたる人を見てゐる雪祭
人波に逆らふ歩み雪祭
ゆかりの像なき淋しさや雪祭
青汁を振る舞はれけり雪祭
雪玉を作る人あり雪祭
雪玉を作る機械といふがあり
像よりも食べ物ブース雪祭
昨年、紋別に流氷を見に行ったが、流氷はなかった。
そこで今年また再挑戦。しかしまた、流氷なし。で、一部は想像句。
流氷の欠片もなくてオホーツク
流氷のすき間にオホーツクの空
軋み鳴る音を力に流氷去る
流氷押し寄せて来しオロシアより
オロシャより流氷の来る怖ろしき
流氷や女に似合ふひとり旅
流氷や困らせるため女泣く
これまでもこれからも一人流氷去る
アザラシを狩る出で立ちの流氷期
クリオネの踊り食いとは怪しからぬ
流氷下クリオネ燃ゆるがごとき赤
流氷や高鬱剤は白き粒
流氷の来ぬまま海の明けにけり
二月の季語で、多作してみた。
(探梅)
探梅の人に我が家の梅を見す
綻梅の戻るを止めて次の駅
綻梅や次の汽車来る時間まで
鴉鳴く方へ方へと梅探る
譲り合ふ沢の木橋や梅探る
(多喜二忌)
多喜二忌や魚油臭に噎す機関室
多喜二忌や魚油を灯せる凍獄舎
下駄の緒の凍みてこはばる多喜二の忌
たばこ火を氷柱で消しぬ多喜二の忌
茹でられて蟹赤くなる多喜二の忌
洗ひても消えぬ魚臭や多喜二の忌
廃運河に結氷軋む多喜二の忌
(バレンタインデー)
バレンタインデー待つ恋の句案じつつ
蟹茹でて真赤バレンタインデー
バレンタインデー我は恋句の名手にて
バレンタインの日の日めくりを破り捨つ
多夫多妻とはフリーセックス岩燕
「天為」3月号
真つ黒な犬牽いて来し十夜婆
−−今年初の蒐玉集。第2席。
剃刀が映す真つ赤な冬夕焼
海鼠掴む心臓抉り出すやうに
まだ泣かぬ枯木ともう泣けぬ枯木
さびしさに立ち出でしかば返り花
平成21年 2月
「天為」1月号では、東京例会報に、特選を一句、蒐玉集の鑑賞に一句、それぞれ載せて、鑑賞してもらった。
年明けから、調子が良いかも。
シャイロック商会に買ふ赤海鼠
えびせんに海老貼りついてゐて暑し
北海道の翼、エア・ドゥが、開業10周年を迎えた。そこで一句。
雪晴の眩しき空にエア・ドゥ機
角川の短歌・俳句合同新年会にて」一句。
破顔一笑「はじめまして」と御慶かな
「鹿児島県知事との新年の夕べ」すなわち「さつま大使の会」にて一句。
春や春さつまとマグマ相似たり
TVで「心中・天の網島」の「河庄」の段を見て一句。
河庄に両手縛られ悴け猫
札幌キタラホールで「フィガロの結婚」を見た。フィガロとあるが、主役はフィガロではなく、
その主人夫妻のドタバタ劇。
狂おしきひと日の果ての雪卍
TVで「川島芳子伝」を見た。「東洋のマハタリ」とも「男装の麗人」と呼ばれた、悲劇の女スパイの物語である。
村松友視の原作にかなり忠実な作品だった。
黒木メイサの男装がなかなか凛々しく、かつ、痛々しくて良い。
満帝の十年の夢霜柱
帝国やすぢかひのなき霜柱
長き詩の欠片のごとし冬の虹
滅びし国の滅びし詩篇冬の虹
国滅び詩篇ちりぢり風花す
ケビン・クラインが主役の舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」を見た。
詩の才に秀で、剣は一流、その上哲学者のシラノの唯一の欠点は、赤く垂れ下った長い鼻。面白かった。
赤鼻の一寸先を鎌鼬
水洟を垂らたらシラノ・ド・ベルジュラック
新年気分を味わうため、キタラホールの、正月雅楽コンサートに行った。
あらたまの寝息を立てて聞く雅楽
凍て厳し王昭君の悲しみに
雁帰る王昭君の肩震へ
新札幌の水族館は、日本でも珍しい内陸型の水族館である。小ぶりだが、なかなか楽しめる。
子が母へ指して教へる小判鮫
アマゾンの髭のナマズと初笑
むまさうな魚が回遊大水槽
魚回遊冬の銀河の渦のごと
冬うららドクターフィッシュは指を噛み
ウーパールーパ健気に泳ぐ冬銀河
春隣ハリセンボンはまん丸に
ガッツ石松に似しピラニアや春寒し
「天為」2月号
小牡鹿がわが妻を見る見つめゐる
リハビリの杖で鹿追ふ島の婆
美しき死後硬直や兜虫
空ぎゆつと雨を堪へて七五三
シャイロック商会に買ふ赤海鼠
平成21年 1月
2009年版の『俳句年鑑』に、5句載せてもらい、更に、50代俳人として紹介を受けた。
去年までは執筆者だったが、今年は担当を外れたので、年鑑を買わずにいたところ、
載っていると教えられ、慌てて本屋で買い求めた。30代で一回、紹介されたことはあるが、
15年ぶりである。
(自薦5句)
先代も先々代も海鼠なり
一人づつ消え涅槃図に釈迦一人
焼くまでの亡骸の身にリラの冷え
噴水の一寸上を冀ふ
甚平を着て夭折に未練あり
(紹介1句)
出口にて振り返りけり薔薇の園
「天為」1月号は、平成20年度特別作品コンクールの発表号である。
「石段にて」という我が応募作が随想部門で第一席を獲得していた。嬉しい。
ただし、俳句部門と俳句評論部門はいずれも、選外。日ごろ、「句と評論は俳句の両輪」と言っている手前、
その両輪が脱輪して、ワイパーが壊れずに動いているのを褒められたみたいだ。
鎌鼬我には触れず過ぎゆけり
我が左右はたと倒れし鎌鼬
25年間払い続けた住宅ローンを、預金を取り崩して繰り上げ完済した。
なぜか急に、ローンがあることが煩わしくなったのだ。
気分晴ればれである。長い懲役から解放されたら、きっとこんな気分に違いない。
ただし、預金が大きく減ってしまった。
深雪晴住宅ローン完済す
深雪晴借金完済預金ゼロ
俳人・秋元不死男の妹の秋元松代が脚本を書いた劇『村岡伊平次伝』を観た。
村岡伊平次は、日本の貧しい女たちを東南アジア方面に売り飛ばして財をなした、いわゆる女衒の親分である。
明治維新後の新国家日本が、東南アジアに進出していく先駆けとして、多くの女性が「からゆきさん」として売り飛ばされ、異国に朽ち果てたのである。
みなみかぜ女衒は日本(くに)の先兵よ
南洋へ売られて咲いて女郎花
劇団四季のミュージカル『南十字星』を観た。『李香蘭』、『異国の丘』と並んで、四季の昭和の歴史三部作の一つである。
第2次大戦時、インドネシアに侵攻した日本軍の一兵士が、戦後、無実の捕虜虐待の罪により戦犯として処刑される話を軸に、
インドネシア人女性との交流、インドネシア人民に対する日本軍の欺瞞と暴虐などが描かれている。
嗚呼ニッポン南十字星(サザンクロス)の涼しさよ
風涼しインドネシアの紅白旗
市民参加劇『アイヌ逓送人・吉良平治郎』を観た。
明治以後の同化政策の下、アイヌ人がいかに差別され、その文化を否定され、日本人に騙されてその諸権利を奪われていったかが基底にある物語である。
アイヌよ滅ぶ勿れ麦生に金貨降らなくも
「父(とう)やん」と子役の声や雪の底
滅びゆく民美しや大雪原
地吹雪や逓送夫吉良平治郎
テレビで中国の世界遺産の一つ、黄山を見て一句。
黄山に七十二峰雲は秋
黄山の秋六万の石の段
屏風巡らせ黄山を未だ見ず
「天為」1月号
在りし日のごとくに鮎へ化粧塩
オリーブの切手くはへて小鳥来る
雨晴れてすぐに日暮れや江鮭
初雁を東京に待つ水買つて
輝きを増す月下山いそぎけり
平成21年 初春詠 
平成21年となりました。
昨年、義父が亡くなったため、この新年は喪中。めでたさ気分は控えめにというところです。
余りたる喪中葉書や去年今年
そんなわけで、今年は年賀を欠礼したため、賀状俳句はなし。
ただし、それでは淋しいので、昨年、天為課題句(20年4月)で特選をとった句を載せておきたい。
写楽から彫師刷師へ年賀状
そのほか、昨年から、折にふれて作り溜めた新年俳句は以下である。
豚グッズ収集家なり年新た
淑気満つ収集癖の豚グッズ
手鞠唄あすは売られて花嫁に
夕暮れは血の色に似て手鞠唄
血は黒く錆び夕暮れの手鞠唄
金賞は空の高みへ吉書揚
羽子板の裏に名前をマナとカナ
恵方道うしろ振り向いてはならず
下痢腹を抱へて沈む初湯かな
人類滅び地球再生初日の出
おぼろげに継ぎ目の見えて去年今年
念ずれば通ずることも初詣
新しき徽墨(きぼく)二日の龍の文
端座して徽墨(きぼく)磨りたる二日かな
初夢や退職金の使ひ道
ピカデリーサーカス走る嫁が君
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これ以前のものは、以下の釦からお入りください。
平成20年分
平成19年分
平成18年分
平成17年分
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